大腸菌培養関連でよく使う試薬の調製方法
5N 水酸化ナトリウム溶液
水酸化ナトリウム | 20g |
メスアップ | 100ml |
水酸化ナトリウム(NaOH 分子量 40.00)は、強いアルカリ性を示す無臭の化合物で吸湿性が高い。
タンパク質を激しく分解し炎症を起こすので、操作の際は、安全めがね、ゴム手袋を使う。また、強いアルカリ性の溶液はガラス容器には保存せずにプラスチック(ポリエステル系はダメ)の容器に保存する。
1. 70 mL程度の滅菌ミリQ水をビーカーに入れ、水酸化ナトリウム20.0 gを加えて、スターラーなどで完全に溶かす。
2. 100 mLになるようにメスアップ。
溶液は室温保存。オートクレーブはしない。
1M 塩化マグネシウム溶液
塩化マグネシウム6水和物 | 20.3g |
メスアップ | 100ml |
塩化マグネシウム6水和物 (MgCl2 · 6H2O 分子量 203.3)は白色の結晶で、にがりの主成分の一つ。
1. 70 mL程度の滅菌ミリQ水をビーカーに入れ、水酸化ナトリウム20.3 gを加えて、スターラーなどで完全に溶かす。
2. 100 mLになるようにメスアップ。
溶液はオートクレーブし、室温か冷蔵保存。
1M 硫酸マグネシウム溶液
硫酸マグネシウム | 12g |
メスアップ | 100ml |
硫酸マグネシウム (MgSO4 分子量 120.37)は、酸化マグネシウムを硫酸に溶かした溶液を濃縮して得られる無色結晶。水に溶けやすく苦みがある。にがりの主成分の一つ。
1. 70 mL程度の滅菌ミリQ水をビーカーに入れ、水酸化ナトリウム12.0 gを加えて、スターラーなどで完全に溶かす。
2. 100 mLになるようにメスアップ。
溶液はオートクレーブし、室温か冷蔵保存。
1M 塩化カリウム溶液
塩化カリウム | 7.5g |
メスアップ | 100ml |
塩化カリウム (KCl 分子量 74.55)は、立方晶系の無色の結晶。海水中にも含まれ、苦い辛味を有する。
エタノールには溶けにくい。
1. 70 mL程度の滅菌ミリQ水をビーカーに入れ、水酸化ナトリウム7.5 gを加えて、スターラーなどで完全に溶かす。
2. 100 mLになるようにメスアップ。
溶液はオートクレーブし、室温か冷蔵保存。
1M グルコース溶液
グルコース | 18g |
メスアップ | 100ml |
グルコース (G6H12O6 分子量 180.16)は、代表的な単糖の一つ。
1. 70 mL程度の滅菌ミリQ水をビーカーに入れ、水酸化ナトリウム7.5 gを加えて、スターラーなどで完全に溶かす。
2. 100 mLになるようにメスアップ。
3. 0.22 μmまたは0.2 μm径のフィルターでフィルトレーション。
溶液は室温か冷蔵保存。
IPTGストック溶液(0.1 M)
IPTG | 0.24g |
メスアップ | 10ml |
IPTG; Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside (C9H18O5S 分子量 238.30)は、ラクトースオペロンの誘導に主に使用される。
1. 10 mL程度の滅菌ミリQ水をビーカーに入れ、水酸化ナトリウム0.24 gを加えて、スターラーなどで完全に溶かす。
2. 0.22 μmまたは0.2 μm径のフィルターでフィルトレーション。
IPTG 0.1 Mのストック溶液は、分注後冷凍保存。
X-galストック溶液(2%)
X-Gal | 0.2g |
ジメチルホルムアミド | 10ml |
X-gal; 5-Bromo-4-chloro-3-indolyl β-D-galactopyranoside (C14H15BrClNO6 分子量 408.63)はカラーセレクションに使用される。
1. X-Gal0.2 gをジメチルホルムアミド10 mLで完全に溶かす。
溶液は、分注後遮光して冷凍保存。
LB培地 (Luria-Bertani medium)
yeast extract | 5g |
tryptone | 10g |
NaCl | 10g |
滅菌ミリQ水 | 1000ml |
1. トリプトン10 g、イーストエクストラクト5 g、塩化ナトリウム10 gを入れてスターラーなどでよく混ぜる。
2. 完全に解けたら、オートクレーブする。
3. 抗生物質を添加する場合は、50 °C程度まで冷ましてから抗生物質を加えよく混ぜる(減菌操作にて)。
培地は、室温か冷蔵保存。
LB寒天培地
yeast extract | 5g |
tryptone | 10g |
NaCl | 10g |
滅菌ミリQ水 | 1000ml |
Agar | 15g |
1. 三角フラスコを用いて、トリプトン10 g、イーストエクストラクト5 g、NaCl10 gを1 Lの滅菌ミリQ水で完全に溶かし、15 gのアガーを加える。
2. オートクレーブ後、手で触れられる温度になるまで冷ます。
3. ベンチの上を70%EtOHで清め、10 cmディッシュを用意する。
4. 減菌操作(ガスバーナーを利用したコンタミ防止操作)により抗生物質を加え、培地をよく混ぜる。
5. フラスコを斜めに傾け、アルミホイルを外し、注ぎ口をバーナーで炙る。
6. 培地がなくなるまでフラスコを斜めに傾けたままディッシュに分注していく。
7. 固まったら裏返してふたの上に少しずらして置いておく(少し水分をとばすため)。
8. 適当なタイミングで回収し、ビニル袋に入れて冷蔵庫に保存する。
オートクレーブしたばかりのあっちんちんのフラスコを水道水で冷やしたり、フラスコを振ったりすると、割れたり内容物が突沸して大火傷を負うこともあるので、単純な作業の中にも慎重さが必要だということを忘れてはいけない。
添加した抗生物質、作成者、作成日は必ず明記する。
アンピシリン(ストック)
アンピシリン(Ampicillin [省略形; Amp])は細菌の細胞壁の構成成分であるペプチドグリカン(Peptideglycan) の架橋反応を阻害することにより、細胞壁の合成を阻害する。その結果、細菌は溶菌する。
耐性遺伝子[bla]は、β-lactamaseをコードしている。β-lactamaseは、β-ラクタム系抗生物質を加水分解する酵素である。
アンピシリンのストック濃度を100 mg/mLとし、使用濃度を100 μg/mLとしている。
アンピシリン | 3g |
ミリQ水 | 30ml |
1. 50 mLのチューブにアンピシリン3 gを入れ、ミリQ水30 mLを注ぎ、完全に溶かす。
2. 0.22 μmのフィルターでフィルトレーションしながら1.5 mLのチューブに分注する。
3. -20°Cで保存する。
使用時は、1000倍希釈(1 Lに対して1 mLのアンピシリンストック液を投入)。
カナマイシン(ストック)
カナマイシン(Kanamycin [省略形; Kan])は、70Sリボソームに結合することによって、タンパク質合成を阻害する。
耐性遺伝子[kan]は、カナマイシンをリン酸化することによって不活化する、アミノグリコシドフォスフォトランスフェラーゼをコードしている。
カナマイシンのストック濃度を30 mg/mLとし、使用濃度を30 μg/mLとしている。
カナマイシン | 0.3g |
ミリQ水 | 10ml |
1. 50 mLのチューブにカナマイシン0.3 gを入れ、ミリQ水10 mLを注ぎ、完全に溶かす。
2. 0.22 μmのフィルターでフィルトレーションしながら1.5 mLのチューブに分注する。
3. -20°Cで保存する。
使用時は、1000倍希釈(1 Lに対して1 mLのカナマイシンストック液を投入)。
テトラサイクリン(ストック)
テトラサイクリン(Tetracycline [省略形; Tet])は、アミノアシルtRNAのリボソーム(アミノ酸の結合したtRNAの総称)への結合を阻害することによって、タンパク質の合成を阻害する。
テトラサイクリンのストック濃度を20 mg/mLとし、使用濃度を20 μg/mLとしている。
テトラサイクリン | 0.2g |
エタノール | 10ml |
1. 50 mLのチューブにテトラサイクリン0.2 gを入れ、ミリQ水10 mLを注ぎ、完全に溶かす。
2. 0.22 μmのフィルターでフィルトレーションしながら1.5 mLのチューブに分注する。
3. -20°Cで保存する。
使用時は、1000倍希釈(1 Lに対して1 mLのテトラサイクリンストック液を投入)。