プラスミド精製
近年、多くのキットが開発され何も考えずに機械的に手を動かすことだけに専念しがちであるが、チューブの中で起きている反応をイメージしながら操作をしなければうまくいかないことも多い。そのため、実験の原理を大雑把でも構わないので頭に入れる必要性もある。
プラスミド精製もそんな遺伝子工学実験の一つである。
「ボルテクスをするな」と注意書きしている理由を調べてみるべきだ。
ハンドプレップ(アルカリ-SDS法によるプラスミドDNAの調製)
1. Falconのラウンドチューブで5ml程度のLB培地で大腸菌を培養する。
2. ラウンドチューブのまま4°C、1500rpmで20min程度遠心し上清を捨てる。
3. ラウンドチューブに100ulのSol1を加えよく懸濁し、エッペンチューブに移す。
4. 200ulのSol2を加え、転倒混和する(ボルテックスをするな)。
5. 氷上で5min静置する。
6. 氷冷した150ulのsol3を加え、転倒混和する(ボルテックスをするな)。
7. 氷上で3min程度静置する(debrisが遠心時に沈降しやすくなる)。
8. 4°C、13000rpmで3min程度遠心後、上清を新しいチューブに移す。
9. RNaseAを加え、37°Cで30minインキュベートする。
10. 等量(450ul程度)のフェノール/クロロホルムで除タンパク処理を2回行う。
11. 2.5倍量の100%ETOHを加え、激しく数回振り、-80°Cで30minインキュベートする。
12. 4°C、13000rpmで20min程度遠心後、上清をすて、エタノールリンスを2回行う。
13. 風乾後、30〜50ul程度のTEバッファーに溶解する。
QIAGEN Plasmid Mini Kitを用いた精製
1. Falconのラウンドチューブで5ml程度のLB培地で大腸菌を培養する。
2. ラウンドチューブのまま4°C1500rpmで20min程度遠心し上清を捨てる。
3. ラウンドチューブに250ulのBuffer P1を加えよく懸濁し、エッペンチューブに移す。
4. 250ulのBuffer P2を加え、転倒混和する(ボルテックスをするな)。
5. 氷冷した350ulのBuffer P3を加え、転倒混和する(ボルテックスをするな)。
6. 氷上で3min程度静置する(debrisが遠心時に沈降しやすくなる)。
7. 4°C13000rpmで3min程度遠心後、上清を新しいチューブに移す。
8. 必要ならば、再度遠心する。
9. カラムに上清を注ぎ、室温13000rpmで15sec程度遠心し、フロースルーを捨てる。
10. 1回でアプライしきれなかったときは、もう一度遠心し、フロースルーを捨てる。
11. 室温13000rpmで1min程度遠心後、上清をすて、700ulのBuffer PEをカラムに注ぐ。
12. 室温13000rpmで遠心後フロースルーを捨てる。
13. 再度500ul程度のBuffer PEをカラムに注ぎ3min待つ。
14. 室温13000rpmで15sec遠心後、フロースルーを捨てる。
15. 再度室温13000rpmで1min遠心後、カラムを新しいチューブにセットする。
16. 付属のElution Bufferか適当な水を30〜50ul加え、1min以上待つ。
17. 室温13000rpmで1min遠心し、チューブDNA液を収集する。
QIAGEN Plasmid Midi Kitを用いた精製
1. Falconのラウンドチューブで5ml程度のLB培地で大腸菌を6hr以上培養する。
2. 50mlのLB培地を注いだ300mlのフラスコをオートクレーブしておき、抗生物質を加える。
3. 適当量の大腸菌を上記のフラスコで大カルチャーする。
4. 培養を50mlのコニカルチューブに移し、1500rpmで20min遠心する。
5. 上清を捨て、4mlのBuffer P1を加え、よくボルテックスする。
6. 4mlのBuffer P2を加え、転倒混和し、室温で5min待つ。
7. 氷冷した4mlのBuffer P3を加え、転倒混和し、氷上で5min以上インキュベートする。
8. 4°Cで3500rpmで15min程度遠心する。
9. 新しい50mlチューブのキャップを外し、新しいグローブをはめる。
10. 2枚のキムワイプを重ね半分に折り、チューブの口に軽くさし込む。
11. キムワイプをフィルターにするイメージでカラムに上清を注ぐ。
12. 1回でアプライしきれなかったときは、もう一度遠心し、フロースルーを捨てる。
13. 室温13000rpmで1min程度遠心後、上清をすて、700ulのBuffer PEをカラムに注ぐ。
14. 室温13000rpmで遠心後フロースルーを捨てる。
15. 再度500ul程度のBuffer PEをカラムに注ぎ3min待つ。
16. 室温13000rpmで15sec遠心後、フロースルーを捨てる。
17. 再度室温13000rpmで1min遠心後、カラムを新しいチューブにセットする。
18. 付属のElution Bufferか適当な水を30〜50ul加え、1min以上待つ。
19. 室温13000rpmで1min遠心し、チューブDNA液を収集する。
吸光度の測定
nanodropでは核酸のクオリティを波形でも確認することができる。
純度の高いDNAは、OD260/280=1.8、RNAではOD260/280=2.0である。核酸は260nmに強い吸収極大を持つので吸収された波長の量でDNA量を量ることができる。しかしながら、フェノール、2−メルカプトエタノールやEDTAは260nm付近で同じように吸収性を示すので、これらの溶液の混入を防ぐ必要がある。
DNaseの活性にはMgイオンが必要なのでEDTAを入れMgを吸収させてDNaseの活性を抑える。
TE(1mM EDTA,10mMTris-HCl,pH8.0)をDNAの溶媒に用いるのもそのためである。